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測定日誌(2020年2月5日, 2月10日)

みなさま  奥森です

月1回水曜日に測定当番に入っています。最近、自主測定した結果をみなさんにお伝えできておらず、大変申し訳ありません。今回、2つの牛乳の測定結果を報告します。長時間測定をしたものもありますので、ぜひ、お読みください。k-40のデータは省略します。


●牧場生まれの牛乳 Lot.DDH 1016グラム 測定時間5,200秒 2月5日測定

核種   放射能濃度   不確かさ   統計誤差   検出下限値   ピーク検出  判定     

Ce-137 ー       ー   ー   1.91㏃/kg    なし     不検出

Ce-134 ー   ー   ー   1.78㏃/kg    なし     不検出

*近鉄丹波橋駅前のファミマで購入した牛乳です。放射性セシウムについては、放射能濃度の測定数値もなくピーク検出もないため、不検出と判定します。

*********

●明治おいしい牛乳 LOT.B5 992グラム(チョットこぼしたので重量減りました)2月10日測定

*当初1,800秒測定しました。この時の結果は次のとおりです

核種   放射能濃度   不確かさ   統計誤差   検出下限値   ピーク検出  判定     

Ce-137 ー       ー   ー   3.27㏃/kg    なし     不検出

Ce-134 ー   ー   ー   3.06㏃/kg    なし     不検出

・測定結果だけをみると不検出ということになるのですが、スペクトルが余りにも荒く、低エネルギーのところが高めのグラフになっているので、測定時間を延長してみることにしました。

++
*7,200秒測定の結果です。 (3600秒の結果は省略)

核種   放射能濃度   不確かさ   統計誤差   検出下限値   ピーク検出  判定     

Ce-137 ー       ー   ー   1.68㏃/kg    なし     不検出

Ce-134 0.87㏃/kg ±0.99㏃/kg  >100%    1.57㏃/kg    なし     下限以下

・Cs-134の放射能濃度が計算されました。統計誤差が100%を越えているため、この時点での放射能濃度の計算結果は、検出値とは見なせません。ただ、スペクトルグラフはやはり、低エネルギーのところが高めになっているので、何かありそうです。

・福島原発事故由来の放射性セシウムの場合は、Cs-137とCs-134の比率は、現時点ではおよそ1:0.06です。Cs-134のみが検出されることは考えられないため、天然核種である鉛214(PB-214)、ビスマス214(Bi-214)を放射性セシウムとして誤検出したと考えられます。引き続き、長時間測定を行いました。

+++
*65,000秒測定(AT機の最大測定時間)

ヨウ素131(I-131)が計算できる設定にしてみました。I-131が放出するエネルギー(365keV)帯のガンマー線を調べるためです。

核種   放射能濃度   不確かさ   統計誤差   検出下限値   ピーク検出  判定     

I-131 0.42㏃/kg ±0.28㏃/kg 65.6% 0.45㏃/kg あり(複数) 下限以下

Ce-137 ー       ー   ー   0.75㏃/kg    なし     不検出

Ce-134 0.51㏃/kg ±0.43㏃/kg  85.4%    0.69㏃/kg    なし     下限以下

・I-131は、365keVのエネルギーのガンマ線を出します(放出率81.8%)、このエネルギー領域でガンマ線を検出したので、解析ソフトはI-131として計算し、放射能濃度を算出しました。しかし、I-131の半減期は8日ですので検出することはできません。では、何を検出したのか?
 ウラン系列の天然放射線核種あるPb-214(351keV・放出率36.7%)が放出しているガンマ線を、I-131が出したものとして計算しています。

・同様に、Cs-134が放出するガンマ線の主なエネルギーは、605keV(放出率97.6%)、796keV(放出率85.5%)です。上記と同じウラン系列のBi-214は、609keV(放出率46.1%)を出すので、このエネルギー帯をCs-134がしたものとして計算しています。

・以上から、上記の測定結果は、天然核種であるPb-214、Bi-214を誤ってI-131、Cs-134として計算したものであり、誤検出であると結論づけられます。


■ 感想

 Pb-214、Bi-214による放射性セシウムの誤検出パターンは、天然核種が含まれている土壌の測定では良く見られる結果です。ヨウ化ナトリウムシンチレーターの分解能では、誤検出を免れることはできません。
 測定結果は、パソコン(解析ソフト)が出してくれますが、それが正しいかどうかは、やはり測定員である私たちが見極めなければなりません。これからも研鑽してきたいと思っております。

 長文をお読みいただき、大変ありがとうございました。みなさま、ぜひ測定所に足を運んでください。いろいろとお話できたらと思います。


by sokutei_kyoto | 2020-02-23 13:42 | 測定日誌 | Comments(0)

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by sokutei_kyoto
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